2018.10.24

片持ち梁方式曲げせん断試験によるSC杭の中空部に中詰めした効果の検討 SC杭の変形性能向上に関する研究(2)(AIJ構造系論文集2018)

田中 佑二郎(ジャパンパイル)、関口 徹(千葉大学)、塚越俊裕(千葉大学)、中井正一(千葉大学)

■掲載誌:日本建築学会構造系論文集 Vol.83, No.752, pp.1455-1464
■発行所:日本建築学会
■発行:2018/10

 杭基礎構造において、大地震時を想定した二次設計を求められることが多くなってきているものの、杭基礎構造に対しては二次設計を行う法的義務がないことから、十分な研究が行われていない。近年になり、既往の曲げ試験データの収集と分析による既製コンクリート杭の強度特性および変形性能の評価や片持ち梁方式による曲げせん断試験および単純梁方式による曲げ試験により、既製コンクリート杭の変形性能の確認が行われている。また、既製コンクリート杭の変形性能を向上させる研究として、PHC杭においては、中空部にコンクリートを中詰めすることで曲げ変形性能が向上するという報告、SC杭においては、中詰め材に用いる材料の強度によって、曲げ変形性能の向上効果が異なるという報告がある。しかしながら、現状の既製コンクリート杭の性能を評価するためには、データの蓄積が十分ではなく、また中詰め材による補強に関する報告があるものの、中詰め材の材料特性が変形性能に与える影響については十分に確認されていない。
 著者らは、前報において、各パラメータ(載荷方式、鋼管厚、軸力、中詰め材)がSC杭の曲げ変形性能に与える影響の確認を単純梁方式による曲げ試験により行った。その結果、中詰め材を用いて杭の中空部を補強することにより、鋼管の陥没や杭体コンクリートの剥落および圧壊の程度が軽減され、杭の曲げ変形性能向上の効果が期待でき、さらに、中詰め材の材料特性によって、その効果が異なることを確認した。
 単純梁方式による曲げ試験では、純曲げ区間(せん断力がゼロで、曲げモーメントのみが働く区間)を設けることができ、曲げモーメントと曲率の純粋な関係を評価することができる。しかしながら、前報の単純梁方式における載荷点の加力形式や試験装置では、軸力導入方式の関係で与えることのできる変形に限界があったため、中詰め材による補強を行った試験体では、最終破壊状況まで確認を行うことができていない。また、パラメータとして設定した軸力に関しては、圧縮軸力のみで引張軸力を与えた試験体が含まれていない。さらに、杭基礎として基本的な性能である軸方向変形に関するデータの確認が行えていない。一方、片持ち梁方式による曲げせん断試験では、純曲げ区間を設けることできないことから、曲率の計測がしにくいものの、大変形まで載荷が行えることや引張軸力の導入および軸方向変形の計測が比較的容易に行えることなどの利点がある。
 本報では、片持ち梁方式による曲げせん断試験を行うことにより、前報と同様に、SC杭を対象とし、①軸力、②中詰め材、の各パラメータが最終の破壊状態、軸方向変形および曲げ変形性能に与える影響を評価した。

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