2021.04.02

変形性能に優れた高靭性WSC杭(基礎工2021)

本間裕介(ジャパンパイル)、浅井陽一(トーヨーアサノ)

■掲載誌:基礎工4月号, pp.106-107「特集:最近の既製コンクリート杭の動向」
■発行所:総合土木研究所
■発 行:2021/4

1.WSC杭の開発
 杭の高支持力化に伴い、杭1 本が負担する水平力も大きくなり、上部構造との接合部付近には、曲げ耐力が高い外殻鋼管付きコンクリート杭(以降、SC 杭)が多く用いられている。SC 杭はコンクリートが外殻鋼管の局部座屈を抑え、また、外殻鋼管がコンクリートを拘束しているため、高い曲げ強度に加え、変形性能も優れていると考えられてきたからである。
 しかしながら、最近の研究から、建物のロッキング等に伴う地震時変動軸力下では、SC 杭は、最大曲げ耐力以降の変形領域に及ぶと、コンクリートの圧壊とともに曲げ耐力が急激に低下し、靭性が乏しい傾向にあることが分かってきた。圧壊した内側コンクリートが遠心成形により設けられた中空部に剥落するために、急激な耐力低下が生じる。
 近年、杭基礎構造においても大地震時を想定した二次設計も求められつつある。そこで、地震時軸力下においても変形性能を有する既製コンクリート杭の開発が急務と考え、靭性を有する改良型SC 杭としてWSC 杭の検討を行ってきた。