2021.09.21

鋼管杭・鋼管矢板の施工ずれの原因と対処・対策(基礎工2021)

細田光美(鋼管杭・鋼矢板技術協会、ジャパンパイル)

■掲載誌:基礎工9月号, pp.18-22「特集:杭基礎の施工ずれへの対処・対策」
■発行所:総合土木研究所
■発 行:2021/9

1.はじめに
 鋼管杭は工場における厳格な品質管理のもとに製造さ れ,土木分野(道路・鉄道・港湾)や建築分野の各種構造物の基礎に広く採用されている。
 構造物の大規模化や巨大地震被害に伴い耐震性の向上がより求められることとなり,鋼管杭の大径・長尺化や 高強度化などが進展した。また,振動・騒音や排土量への環境負荷低減対策などの観点からは中掘り杭工法,鋼管ソイルセメント杭工法,回転杭工法,圧入杭工法などが開発されてきた。さらに,建築分野への高支持力杭工法の浸透も経て,鋼管杭工法の選択肢は多岐にわたってきている。
 また,パイプ状の継手部材を鋼管の任意位置に取り付けられる鋼管矢板も採用されている。鋼管矢板は,鋼管矢板基礎,護岸,岸壁,土留めなどの壁体構造として使用されており,配置の多様性(直線,円形,矩形など任意の法線形状での施工が可能)や継手内部へのモルタル 注入などの処理により優れた止水性を発揮するなどの特徴を持つ。
 これらの鋼管杭の施工法に共通する施工精度としての 「ずれ」は3項目あり,①鉛直方向のずれ(高止まり,低止まり),②水平方向のずれ(心ずれ),③傾斜がある。 今般,特集号の鋼管杭各論への対応として,本稿では施工精度の現状を見つめつつ,多岐にわたる各施工法の特性に起因するずれの原因や工夫された対処・対策について取り上げるものとする。