2007.10.01

各論 摩擦杭工事の注意事項と対応(基礎工1983)

藪内貞男(武智工務所)

■掲載誌:基礎工3月号, pp.101-108
■発行所:総合土木研究所
■発 行:1983/03

近年,摩擦杭もしくは支持力としての摩擦力を見直し活用してゆこうとする機運が高まってきつつある。昨年(1982年),土質工学会においては,会誌「土と基礎」2月号において,「摩擦杭」と題し,小特集を組んで設計例などを取り上げている。これに続き,日本建築学会も秋期大会において,パネルディスカッション「支持杭を使わない基礎工法」の中で摩擦杭を取り上げている。
こうした動きは,地盤沈下地帯で負の摩擦力などにより支持杭基礎に生じたいろいろの障害例の報告から,支持杭万能の考え方に対する反省,および経済性の追求が検討され始め,建物の用途や規模にバランスする基礎構造を考えるようになったためである。歴史的に見ると,摩擦杭は古くから各種の構造物において相当広範囲に使用されていた。
しかし,当初はまだ土質・基礎工学的にも未解明のものが多く,かつ実務者へこの分野の知識も浸透していなかったため,主として圧密沈下に起因する失敗を起こす例がいくつか見られた。
このため,摩擦杭は支持杭に比較して杭としての信頼性が低いと考えられてきた。しかし,摩擦杭基礎を持つ構造物の大部分が立派に存在していることも事実である。このことから,摩擦杭もその使用法が適切であれば,十分な安全性と経済性を持つ基礎杭であるといえよう。沈下量を考慮すれば,摩擦杭は各種の利点を備えた基礎工法として使用できることは,すでに1968年,文献において指摘されている。
 また文献には(1974年),国鉄の高架橋基礎において摩擦杭基礎が立派に機能していることが示されている。しかし,一般に再認識され注目されだしたのは,やはり最近のことと思える。事実,摩擦杭を用いた構造物の成功例の報告や採用に向けての実物大の杭による実験工事結果の発表にも最近のものが多い。これらの実証例が増えるに従って,ますます摩擦杭基礎も多用されるものと考えられる。このような時期に,本誌にあっても,特集「基礎工事“べからず集"」の中に「摩擦杭工事の注意事項と対応」として,摩擦杭を取り上げている。まさに時機を得た配慮といえる。