2007.11.15

杭頭と基礎フーチング間のすべりを考慮した「杭頭縁切り工法」について(その1 設計法とモデル解析)(AIJ2004)

小林恒一(ジオトップ)・小椋仁志(ジオトップ)・和田章(東工大)

■掲載誌:日本建築学会大会学術講演梗概集,p457-458
■発行所:日本建築学会
■発行:2004/8

  杭頭接合の歴史を振返ると、小径の杭を用いていた場合には杭を地業と見なし、基礎部と杭の間には敷砂や捨てコンクリートなどにより縁が切られた工法が一般的であった。杭頭を基礎フーチングに埋め込みさせる場合でも、数cm 程度の埋め込みで接合筋を設けない場合が一般的であった。この当時の杭は、基本的には鉛直支持性能のみを期待していた。その後、いくつかの地震被害を受け、杭頭部での損傷が明らかになるにつれて、杭自体は地震時の水平力も負担できる水平部材として考えられるようになった。このような杭頭接合の歴史と地震被害事例の関係について調べると、1978 年の宮城県沖地震では杭頭部が大きく損傷した被害事例が多く見られ、杭の耐震設計として設計指針1)が策定されることになった。この時、これまでの杭頭接合と基礎部の接合部における応力伝達について未解明な部分があったが、安全側の設計として杭頭を固定とする考え方が一般的となった。そのため、固定条件を満たす接合工法を標準の接合工法として、既製コンクリート杭では10cm 以上の埋め込みと接合筋で杭頭を基礎部と一体化させることが一般的になった。しかし、1983年の日本海中部地震の地震被害事例調査2)では、杭頭と基礎部が完全に緊結していない4階建て建物で杭頭に滑動が生じることにより(地震後に建物に約15cm の残留変位有り)、杭および建物にほとんど被害が生じていなかった事例が見られた。また、兵庫県南部地震における杭の被害事例から、杭頭と基礎部の間をピンやローラー接合することにより、杭頭部の応力を低減させる工法も開発されるようになってきた3)。残留変位が残ることを問題にしなくて良い場合には、基礎部と上部構造を分離した工法および設計は合理的な基礎工法と成りうることが分かる。ここでは、その一つの工法として、1 次設計レベルでは杭と基礎フーチングの滑動を許容しない設計とし、水平力は杭で負担する(ただし、杭頭境界条件はピンあるいは半固定条件)設計とする。さらに、2 次設計レベルでは、水平力をすべて杭で負担すると高耐力の杭が必要となるので、ある程度の水平力までは杭(それ以上の水平力で杭頭と基礎部の滑動を許容する)に抵抗し、それ以上の水平力は他の水平抵抗要素(埋込み部、耐震杭など)を考慮しつつ杭との併用で負担する設計が合理的であると考えられる。
ここでは、このような杭頭接合工法を「杭頭縁切り工法」と呼ぶこととする。本報告では、「杭頭縁切り工法」の設計の考え方およびモデル建物の解析結果について述べる。

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