2007.10.22

アンボンドアンカーを用いた既製コンクリート杭の杭頭半剛接合部の力学的挙動に関する研究(AIJ構造系論文集2007)

佐々木聡(フジタ技術センター)・山本英明(フジタ)・小林恒一(ジャパンパイル)・松山俊樹(岡部)・内海祥人(岡部)

■掲載紙:日本建築学会構造系論文集 No.620, pp.81-86
■発行所:日本建築学会
■発行:2007/10

 杭基礎において杭頭接合部は,建物の耐震性能を左右する重要な部位である.1995年兵庫県南部地震においても,杭頭部が破壊し建物が傾くなどの甚大な被害を与えた例も見られている1)、杭基礎の耐震安全性を検討するにあたり,杭頭接合部およびその近傍の耐震性能を明確にすることが重要な課題の一つである.杭基礎を有する建物が地震時の水平力を受けた場合,杭頭接合部の回転が拘束された状態では,杭頭部の曲げモーメントが最大になり,非常に厳しい応力状態となる.一方,杭頭の回転拘束を無くすると,地中の杭中間部の曲げモーメントが大きくなり,また,水平変位も大きくなる.いずれの場合においても,曲げ降伏する部位の変形能力が乏しいと,せん断力および軸力を保持する能力が喪失し,建物に甚大な被害を与える結果となる.
近年古は,杭頭部の曲げモーメントを緩和し,杭の耐震安全性を確保する合理的な設計を意図した杭頭半剛接合部の研究開発が行われている.場所打ちコンクリート杭では,杭頭部の断面を縮小し鋼管を巻いて横拘束することで耐力と変形性能を確保した半剛接合部に関する研究2)が見られる.この工法は接合ディテールが比較的簡易であり,類似した工法の開発も行われている鋤.一方,既製コンクリート杭では,杭頭部に半剛接合あるいはピン接合を実現するためのデバイスを設置した接合部に関する研究5狗が見られるが,より単純な工法の開発が望まれている.杭頭接合部の曲げ耐力に関する既往の算定方法には,パイルキャップのコンクリート部分の有効断面積を杭断面積よりも大きくした慣用的な計算法ηや,それに加えてパイルキャップコンクリートの支圧効果を考慮した研究8)が見られるが,半剛接合部の曲げ耐力に関する検証は十分ではないと考えられる.
以上の背景を考慮し,本研究では,図1に示す丸鋼と定着板からなる金物(以下,アンボンドアンカーと称す)を用い,接合部の応力伝達機構が単純な半剛接合工法を提案し,その力学的挙動の検討を行う.杭頭端板にアンボンドアンカーを接合した半剛接合部は,曲げモーメントが作用すると,定着筋の伸びに伴う回転変形が生じる.この接合部の曲げ耐力,剛性を評価するためには,パイルキャップのコンクリートの支圧効果と定着筋の付着挙動を考慮する必要がある.本論文は,実大寸法の杭頭接合部の水平加力実験を行い,主として,曲げモーメントー回転角関係について検討した結果を示す.本論文は,文献14)に加筆・修正してまとめたものである.

Download