2016.01.21

東北地方太平洋沖地震における杭基礎の被害要因に関する解析的検討(AIJ構造系論文集2015)

金子 治(戸田建設)、川股紫織(ジャパンパイル)、中井正一(千葉大学)、関口 徹(千葉大学)、向井智久(建築研究所)

■掲載誌:日本建築学会構造系論文集 Vol.80, No.717, pp.1699-1706
■発行所:日本建築学会
■発行:2015/11

 2011年東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)での基礎構造や地盤の被害として,地盤の液状化による傾斜・沈下,宅地の崩壊あるいは津波による転倒以外にも,過去の大地震と同様な杭基礎の破損も多く見られた。これらの被害は,宮城県から千葉県まで広範囲に渡っており,その多くは,上部構造の被害は小さく耐震安全性は確保されているにもかかわらず,杭の破損により建物全体が傾斜したために継続使用できない状態となった。そのため,地震後は上部構造の被害は軽微であるにもかかわらず解体するか,杭の補修およびジャッキアップ工事が必要となった。
 また,これらの被害を受けた建物は,杭基礎の耐震設計が行われていないと考えられる年代のものが多いが,現行規基準に従って中程度の地震動に対する設計が実施されている建物も含まれている。被害調査の収集・分析結果によれば,被害建物の建設年代は杭基礎の耐震設計に関する建設省課長通達が出された1985年以前が74%,1985年以降が26%となっている。被害は建設年代によらず,杭種としては比較的変形性能の小さい既製コンクリート杭が主であり,地盤としては表層が軟弱な粘性土層か液状化地盤,もしくは比較的不均質な地層構成となっている。ここから,被害過程を再現し被害の要因を把握するためには,中程度の地震動に対する設計では考慮されないことの多い杭体の変形性能や地盤特性の詳細な評価が必要と考えられた。
 そこで,本研究では,2011年東日本大震災において,現行規基準を満足する杭の耐震設計が行われていることが確認され,かつ一部の杭基礎のみが破損することにより建物が傾斜するという特徴的な被害を受けた建物を対象として,基礎構造のみのモデルを用いて杭1本ごとの破壊に至る挙動を解明するための解析的検討を行った。解析モデルとしては被害のあったフレーム全体の杭と地盤ばねからなるモデルとし,大地震時の基礎構造の耐震性評価のための解析手法の提案に基づいて,杭体についてはそれぞれの杭の負担軸力に応じた荷重一変位関係や杭頭接合部の回転剛性を考慮した。地盤ばねは土質や深さ(上載圧)を考慮した非線形モデルに加え,本建物では杭間距離が近いことからその影響(群杭効果)も考慮した。建物への地震入力や地盤変位は,観測記録に基づく応答解析結果により求めたが,上部構造からくる慣性力(杭頭水平力)および軸力については1次設計に用いる弾性解析結果から推定した。

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