2007.11.15

埋込み節杭のデータによる摩擦杭の荷重〜沈下量関係推定法の提案(JGS1999)

二見智子(ジオトップ)・小椋仁志(ジオトップ)

■掲載誌:III-7,p127-132
■発行所:地盤工学会
■発行:1999/11

鉛直荷重に対する杭の設計において、これまでは支持力のみが重視されて、沈下量についてはあまり検討されていなかった。しかし、基礎構造においても限界状態設計法の導入が検討され始めているように、今後は「変形」も考えた設計が主流になるものと考えられる。したがって、杭の設計でも、これからは支持力だけでなく沈下量の検討も重要になってくる。特に使用限界状態は、支持力ではなく沈下量によって規定される方向にある。そのため、杭が鉛直荷重を受けたときの沈下量を、簡便に精度よく予測する実用的な手法の確立が必要となる。杭の荷重〜沈下量関係(以下、P〜S関係〉を推定するには、次の方法があり、多くの適用例が報告されている。
(1)FEMによる方法。
(2)Mindlh1解を用いて地盤の変位を求め、それと杭の変位とを適合させて解く方法。
(3)周面摩擦抵抗沈下量関係と先端抵抗〜先端沈下量関係を適切な関数で与え、杭の縮み量を考慮して変位σ)適合条件式を解く方法(以下、荷重伝達法と呼ぶ)。これらのうち、本論文でデータとして用いた節杭に適用したものには、(2)の方法を用いた小椋らの解析法1)と、(3)の方法による平山らの解析法2)がある。しかし、前者は節杭の支持力機構を考慮した複雑なモデルを用いており、計算も煩雑であるため実用化には至っていない。後者は、周面摩擦抵抗〜沈下量関係と先端抵抗〜先端沈下量関係の両者に、Kondner型双曲線関数を仮定して荷重伝達解析3)を行ったものである。双曲線の係数は、ひずみ計測を伴う18件の埋込み節杭の鉛直載荷試験のデータから導いた式により決めている。この方法は、計算が簡便であって、たいへん実用的な手法である。ただし、平山らは、r安全側の沈下量を与える」との観点から、解析による沈下量が実測値より大きくなるように双曲線の係数を設定している。しかし、沈下量が実際よりも大きく計算されることは、必ずしも安全側であるとはいえない。むしろ、解析による沈下量は最も可能性の大きい値を与えた上で、その信頼性を確率論に基づいて示す方が合理的と考えられる。そこで筆者らは、統計処理するには十分な数の埋込み節杭の鉛直載荷試験が蓄積されたのを機に、平山らによる双曲線係数の見直しを行った。本論文は、この係数の計算方法とP〜S関係の推定方法、および、その信頼性について述べたものである。

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