2010.03.15

拡大根固め鋼管杭のFEM解析による支持力特性の検討(JSCE構造工学論文集2001)

脇屋泰士(川崎製鉄)・元木卓也(川崎製鉄)・三村哲弘(ジオトップ)・福田一夫(ノザキ建工)・森本宣弘(川鉄テクノコンストラクション)

■掲載誌:構造工学論文集Vol.47A,p1579-1586
■発行所:土木学会
■発行:2001/03


昭和40年以降、市街地での振動・騒音の規制が厳しくなり、杭基礎工法も打撃工法から低振動・低騒音工法へ移行してきた。既製杭における代表的な低振動・低騒音工法は埋込工法であり、プレボーリング工法あるいは中掘工法により杭を沈設するものである。これらの工法の多くは、杭先端部にセメントミルクを注入して根固め施工を行うことで支持力を発現させている。杭先端部に杭径よりも大きな拡大根固め施工を行う工法は、建築基礎の分野を中心に開発が行われ、それらの多くは建設大臣の認定工法として利用されている。これらの工法においては、工法ごとに根固め部の形状が異なるものの、先端支持力の算定には根固め形状の影響は考慮されておらず、同一の支持力算定式が採用1)されている。
根固め部の形状特性が杭の支持力に与える影響を検討した既往の研究として、直径30mmの模型杭を用いた実験的研究2)3)4)がある。実験土槽において根固め形状(根固め径および高さ)を変えた杭の載荷試験を行い、根固め形状に応じて破壊機構が異なることを示すとともに、極限解析により根固め部の終局耐力の評価式を導いている。
また、既製コンクリート杭を対象として、FEM解析手法を用いて根固め部の形状特性に関する検討を行った研究5)もある。研究においては、根固め部の破壊機構についての研究を行い、根固め部と杭との付着力や根固め高さおよび底面形状が構造耐力に大きな影響を及ぼすことを指摘している。
一方、鋼管杭の拡大根固め工法については、根固め部の破壊機構や形状特性に着目した検討はこれまでに行われていない。一般的な使用状況において鋼管杭の肉厚はコンクリート杭の1/10程度であり、杭先端部から根固め部への力の伝達機構は両者で異なると考えられる。既に実用化されている工法においても、コンクリート杭の場合には先端部に特別な加工は施していないのに対して、鋼管杭の場合には杭先端部の管内にずれ止めリングを取り付け、その支圧力によって杭から根固め部へ力を伝達させている。
そこで本研究では、鋼管杭の拡大根固め工法を対象として、根固め部の構造耐力および杭としての支持力特性に関する検討を行うこととし、根固め部および地盤の弾塑性特性を考慮したFEM解析手法を用いて根固め部の材料強度や形状および地盤特性を変えたパラメトリック解析の結果のいついて報告するものである。

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